皆さま、こんにちは。PRest株式会社、鈴木秀逸です。
前回、テレビ番組の種類をご説明し、狙い目は情報番組・ワイドショー番組というお話しをさせていただきました。今回は、番組制作の知られざる現場についてお話しします。
●テレビ番組の特徴を知る
テレビ番組を分析してみるとわかると思いますが、その大半は女性を意識した番組作りをしています。これは現代の消費社会の中心は女性であり、市場に出回っている製品の多くが女性をターゲットとしたもの、ということからも当然と言えば当然です。『テレビといえども同じ』このことを理解しているか、していないかで、PRの方法も、効果も変わってきます。
端的に言えば、
「わが業界では大変な新発見ですので、絶対取り上げるべきです!」
などとPRするよりも、その新発見が女性(視聴者)にどう関係するのかを伝える必要があるということです。
「うちの商品は女性と何の関係もないなぁ......」
と思う人がいるかもしれませんが、心配ご無用。女性に興味を持ってもらう術はいくらでもありますから。それは後々記します。
●番組制作の現場 一、制作ディレクターの苦悩 これまでの連載で、なんとなく、PR活動の対象としてのテレビという世界が、つかめてきたのではないかと思います。そこで次に、制作ディレクターの実態を説明します。私が携わっていた「情報番組」社会の内情だと思ってお読みいただければと思います。 テレビ業界の人間は非常にハードなスケジュールのもと、時間に追われて仕事をしているというイメージが世の中にはありますが......これはまさしくその通り。 帯番組では日々違う内容、しかも数字(視聴率)の取れるコンテンツを放送しなければいけないのですが、そうそう毎日うまい具合にネタが転がっているわけはなく、来る日も来る日もネタ探しが悩みの種。 ところでテレビ業界の仕事は、ある意味、他力本願な仕事と言えます。 自分たちで、何かを生み出すのではなく、他人様の功績、事業、あるいは活動を取材しなければ、成り立たないのですから。取材先あってのテレビ業界と言ってもいいのかもしれません。 当然、苦労して見つけたネタでも、取材先の都合が、放送スケジュールや撮影スケジュールに合わず、泣く泣く断念しなければならないことも多々あるのです。一番調整が難しく、多くのテレビマンが涙を呑む時期は、盆暮れ正月・ゴールデンウィーク。昔は商売人の稼ぎどきなんて言われていたようですが、現代では多くの会社が一斉に休みを取り、社会の動きがストップします。 企画成立直前までこぎつけても、 企業「で、取材日はいつごろになるんでしょうか?」 番組「5月2日の昼ごろでお願いします。」 企業「申し訳ございません。その日は......」 ということもよくありますし、取材依頼の電話をすると休みで、誰とも話をすることができず、人知れず「お蔵入り」になってしまったことも度々ありました。 テレビマンにとって、ネタが見つからない、もしくは目当てのネタがこける(お蔵入り)となるとこれはもう大変です!ネタが決まるまで、自宅に戻ってゆっくり眠るなんてことは許されません。 私のAD(アシスタント・ディレクター)時代は、上司であるディレクターからネタ探しの至上命令を受けて、テレビ局内にある、新聞・雑誌などを保管する「資料室」に、缶詰にさせられることなど日常茶飯事でした。 全国紙・地方紙・産業紙はもちろん、ありとあらゆる雑誌に手を伸ばし、放送できそうなネタ探し。2~3週間も前に発行されたものまでさかのぼり、隅から隅まで目を通していきます。やっとのことで見つけて、ディレクターに提出しても、OKがでなければ、資料室に舞い戻り、見落とした情報がないものかと、再度同じように、ありとあらゆる新聞、雑誌に目を通すのです。 めぼしいネタが見つかってディレクターのOKが出ない限り、何度でも見つかるまで、ディレクターのデスクと資料室の往復を繰り返し、すでにチェック済みの大量の新聞や雑誌を穴があくほど見続けるわけです。 自分が担当するコーナーの放送日を目前に控えたディレクターは、必死でネタ探しをします。その形相から、OAが近いディレクターがわかってしまうくらいですから、尋常じゃないですよね。 二、「できません」は死んでも言えない では、なぜそんなに必死にネタを探すのか......。 それには様々な要因があります。 その一つとして、面白いネタを放送し続ける=クリエイターとしての能力を示し続けないと、どんどん有能な人間が登場してきて、 「お前がいなくたって、替えはいくらでもいるんだからな」 こんな宣告をされてお払い箱になってしまうのでは、というリストラ恐怖症が身に染み付いている業界ということがあるでしょう。 しかし、もっとも恐ろしいのは、スポンサーが広告枠(CM)を買うために、数千万円もの大金を支払っているコーナーを、自分ひとりの責任で完成させなくてはならない、というプレッシャーです。 ネタが見つからないからと言って、同僚のディレクターがネタを譲ってくれることはありません。同僚にだってそんな余裕はありませんから。もちろん、上層部がネタを用意してくれることもありません。 決まらないのは担当ディレクター個人の能力の問題なのです。加えて、自分がネタを決められないと、迷惑を掛けることになる人間の数が半端ではないのです。スポンサー企業はもちろん、番組スタッフ、番組プロデューサー、放送局の営業担当者、自分の所属する制作会社にまで被害がおよびます。毎度毎度の放送で「数千万円の責任」というプレッシャーが自分にのしかかってくるのは、並大抵のストレスではありません。 私が働いていたときにも、そのプレッシャーをめぐる事件がありました。 とある日、放送を終えたスタッフルームに一本の電話が鳴り響きました。電話の主は、その日、ロケを担当していたカメラ技術のクルーからでした。 「出発時間になってもディレクターが姿を見せないんだけど、スタッフルームにいる?」との問い合わせです。 スタッフルームに姿はなく、あわてて、手の空いている人間で心当たりを探して見たものの、一向に見つからない。自宅に連絡を入れても本人は不在、家族は行方を知りませんでした。 幸い、撮影スケジュールを記した紙が見つかり、代理の撮影ディレクターが取材現場に向かうことで落ち着きました。 代理が現場に到着してみると、担当ディレクターが行方をくらませた理由がすぐに判明。なんと、スケジュールに記されていた現場では取材拒否をされており、次の現場は改修工事の真っ最中で、とても撮影できる状況になかったのです。 担当ディレクターは、代わりのネタが見つからず、コーナーが埋まらないと悟り、恐ろしくなって逃亡してしまったのです。 話は少し逸れてしまいましたが、テレビマンは失踪してしまうほどのプレッシャーを常に抱えながら、いつも仕事をしているのです。 ちなみに、コーナーに穴が開いた場合は、ほかのニュース枠などの時間配分を増やして対処します。めったにありませんが。 三、本当は重宝がられる情報提供! 何を言いたいかというと、そんな精神的に危機な状況下に常に置かれているディレクターにとって、放送できそうなネタ(情報)は「宝物」なのです。ですから、PR活動(情報提供)は、「テレビ番組ディレクター様を崇拝し、歓待する」ようなものではありません。どしどし番組あてに情報提供を実施してください。ディレクターの本来の仕事は話を聞き、吟味し、興味を惹く面白い話題をわかりやく視聴者に伝えることなのですから。 しかし、留意すべき点もあります。後ほど詳しく説明しますが、通常、企業やPR会社からメディアへの情報配信は、「プレスリリース」と呼ばれる印刷物によって行われます。 プレスリリースには伝えたい情報、発表する内容の概略などが記載されていますが、この情報提供がくせ者。私の経験から言って、正直、送られてくるプレスリリースの99%は、どうでもいい内容なのです。 テレビ番組は、視聴者が求めている情報を放送しなければなりませんので、番組を制作するディレクターも、業務上、視聴者の立場で考えること、判断することが、身に染みついています。 しかし、視聴者や番組制作者の考え方や立場を理解し、そのニーズに合う有益な情報を盛り込んだプレスリリースは、非常に少ないのが実情です。また、残念なことに、企業のPRを請け負って、テレビ局にやってくるPR会社のスタッフにしても、当り障りのないプレスリリースを差し出しては、当たり前のように、 「これ、何とかなりませんかね?」 「この間お渡しした資料の件、どうなりました?」 などと、オウムのように繰り返すだけというパターンが大多数なのです。 ですから、テレビ番組を理解し、放送できそうな「切り口」をある程度提示することができれば、あなたが扱う商材が、テレビ番組の取材を受ける可能性は大きくなります。テレビ番組で紹介されて一躍有名になるのも、最早、夢ではありません。 まずは市販されているマニュアル本通りに、プレスリリースを作成し、PR活動を実践するという方法もありますが、「テレビでの紹介」を強く望むのであれば、番組制作を理解したプレスリリース作りからはじめることを、おすすめします。 本コラムでは、テレビ番組の制作者側の事情を踏まえた、プレスリリース作りのコツも解説していきます。 四、鳴り響く「幸せ」と「戸惑い」の連絡 先に書いたように、制作現場のディレクターは、常にギリギリ、がけっぷち。取材協力先と連絡を取り合うのに時間的な余裕があればいいですが、生放送番組の場合、放送日の直前までネタを探し回っていることもしばしば。 「あのう、明日取材させてほしいのですが......」 などと、急に連絡することも間違いなくあります。かくいう私も、地域紹介コーナーや生中継コーナーを担当していたときには前日、ひどいときには当日の撮影現場で、いきなり取材のお願いをしたことも度々ありました。 真剣に、PR活動を行おうと考えているのでしたら、テレビ側にこのような事情があることを覚えておき、どのような状況でも瞬時に対応できるだけの体制は整えておくことをおすすめします。突然の取材に対応できる体制を整えておけば取材される機会は広がり、せっかくのチャンスを逃がすようなことをしなくてすみますから。 放送直前、ギリギリの状況下で舞い込んだ取材依頼を断ることは、もったいないことこの上ない。それに応えられる心づもりがあれば、いざというときに動じないですむので、念頭に置いておくのは無駄ではありません。 そして、取材チャンスを逃さないためにも、勤務時間外であろうと休日であろうと、連絡が全くつかなくなるという状況は、避けるべきです。アフター5や休日にやむなく連絡を入れたが、誰ともつながらない。こうして人知れず、せっかくのチャンスを逃してしまうことは、意外に多いのです。 テレビ業界の人間は、一般企業の人とは時間の感覚が異なります。その上、殊のほかせっかちです。そのことを理解しておいたほうがいいでしょう。 必要なときに連絡がつかなければ、よほどの魅力がない限り、ほかをあたります。機会を逃さないためには、プレスリリースに、会社の連絡先だけではなく、携帯電話の番号を記すことも一つの方法でしょう。
- 2009年10月12日 10:04
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